芥子(けし)人形とは、芥子粒のように小さい人形をさします。貞享3年(1686)刊行の『雍州府志』に、「木彫りの人形に衣裳を着せた小さいものを芥子人形といい、京極東四条で作られている」と書かれています。
芥子人形には、賀茂(かも)人形・牙首(げくび)人形・お細工(さいく)人形などが含まれ、芥子粒のように小さいのに、よく見ると豊かで大らかな表現がなされていて、ミクロの世界に寿福の世界が広がっています。
牙首人形の牙とは、象牙(ぞうげ)のことです。その象牙を用いて顔や手を制作した人形に、起き上がり小法師のように底辺に錘(おもり)をつけ、着物と同じ衣裳裂で見えないように蓋をしています。
人形全体の大きさは、5mm〜1.5cmくらいで、顔は仁丹の粒くらいの大きさになります。あらしぼの縮緬(ちりめん)の裂や金襴の陣羽織を纏(まと)っている身体本体は、木材のほか、象牙の粉か石膏のようなものを使用しています。頭も象牙を細密に彫ったものもあり、指先の器用な日本人ならではの緻密な仕事と感心するほどです。