衣裳人形の題材は、若衆・遊女・野郎・婦人などさまざまです。
その中でも、若衆を題材にしたものが多いようです。
これは現在でも、若くて格好の良い男性が人気の的であるように、当時も美しい歌舞伎役者が憧れであり、大変な人気をさらっていたからです。
一世を風靡(ふうび)した、名古屋山三(桃山時代の歌舞伎役者)を模した人形も、憧れの表れだと考えられます。
また、当時、自分が贔屓(ひいき)にしている花魁(おいらん)を実在と変わらぬ姿の人形に制作させた話が、井原西鶴の『好色一代男』の中で「都のすがた人形」と題されて書かれています。